日本経済新聞社が発刊している日経MJの2016年9月26日(月)分にて、LIFE STYLEが紹介されました。 ITや経営の面から現代を鋭く読み解く「先読みウェブワールド」と題されたコーナーにて、放送作家・戦略PRコンサルタントである野呂エイシロウ氏が、LIFE STYLEが全面サポートを行ったYouTubeの360°「ホラー」動画制作プログラムの紹介を行っています。下記に掲載文を転載しますので、ぜひご覧ください。 プロ超える表現者育む 「ユーチューブ・ホラープロジェクト」という面白いイベントが、六本木ヒルズ(東京・港)の動画制作空間「ユーチューブスペース」で開かれた。米ニューヨークや英ロンドンなど世界6カ国7カ所で行われている、ハロウィーンにあわせての企画である。 日本では映画「呪怨」でおなじみの清水崇監督が、6月に公開した映画「貞子 VS 伽椰子」の関連動画をこのスペースで撮影したという。 筆者はテレビ番組「特命リサーチ200X」などで恐怖企画を何度もやってきたが、実は怖い物が苦手。それでもこんかいはあるハイテク機器を見に足を運んだ。 先程の「貞子 VS 伽椰子」の動画のセットで、日本全国のユーチューブ利用者が動画を撮影できるというのだ。プロの映画監督が撮影したセット、機材を使える。さらに今回の目玉は、360度3D動画というところにある。特殊なゴーグルをつけて見ると、立体に見えるという。 早速筆者も試してみると…これはマジですごい。体験したことがない新感覚の映像だ。奥行きが明確で、手前のものと奥のものとがはっきり区別できる。実際にその場にいる感覚さえ感じられ、今までの映像体験とは明らかに違う。 この技術を支えているのがユーチューブの親会社であるグーグルが開発した「JUMP」というシステムである。 「JUMPカメラリング」という特殊なカメラと「JUMPアセンブラ」という編集機器からできている。今回、アジア初お目見えになる。JUMPカメラリングは直径50センチぐらいの輪に、外側を向けて小型カメラ「GoPro(ゴープロ)」を????台取り付けてある。これによって360度の風景を死角なく撮影できる。高画質の4Kカメラを使っているので立体感が増すそうだ。 このカメラでの撮影は非常に難しい。今回の企画も360度の動画に詳しいライフスタイル(東 京・港)が技術協力している。「360度写るのでカメラマンが同行できません。三脚のみです。監督がその場で演技指導することもできません」と永田雅裕社長は言う。 通常の映画やテレビの場合、セットは片側だけ作ればいいし、カメラの後ろにはカメラマンやディレクター、僕ら放送作家もいる。通常のテレビ番組収録なら50人近い。それが360度カメラでは写り込んでしまう。だからJUMPのカメラの場合は、別室で確認しなければならない。注意しなければケーブルや照明まで写る。 編集機器のJUMPアセンブラの役割も重要だ。実は16台のカメラの映像を取り込むというのは非常に難しいことらしい。当然ながらデータ量が16倍あり、さらに映像の継ぎ目をきれいに見せなければならない。 ハードディスクに取り込むだけでも通常なら何百時間もかかる。それを専用ソフトで短時間処理できる。専用のカメラには、専用の編集機器も必要というわけだ。 高価なこのシステムをユーチューバーと呼ばれる映像制作者たちに貸し出しているというから、グーグルは太っ腹だ。コンテンツの普及になればと考えているのだろう。 映像技術が進み、現実とバーチャルの世界の境目がわからない時代がくるのではないか。そして、テレビマンなどのプロ以上の速度で、ユーチューバーなどの映像表現者は新しいものに飛びつき、時代を作ってゆくのだろうと実感した。 [日経MJ2016年9月26日付]